【ジョーカー】感想|映画自体を「〇〇〇〇」として見ると楽しめる(映画ネタバレあり)
公開日:2019/11/19 更新日:2020/02/15また傑作が生まれた。
そして、「ダークナイト」のようにこの映画がきっかけでまた犯罪が起きるんじゃないか。
リアル・ジョーカー。ダークナイト乱射犯が自宅に仕掛けた殺人ブービートラップに全米二度震撼(動画追記)
これが見終わった後に思ったことだった。
ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲ったのも、今年の映画賞は総取りと言われるのも理解できる重厚な映画だった。
一方、ブログで「つまらない」「退屈」「駄作」と感想を書いている人もいるのもわかる。そういうブログも読んだけど視点とか映画の作り方なんだよな。それが面白いと思うかどうかで、全然楽しみ方が変わってくる。
私自身はこの映画自体がドラッグのようなトリップする感覚になった。
「マルホランド・ドライブ」、「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」のようだ。
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なぜそのように感じたか、「ジョーカー」はどんな映画だったか、そしてなぜつまらないという人がいるのか、私の感想と考察(ネタバレあり)を書いていく。
目次【記事の内容】
「ジョーカー」の概要
2019年/アメリカ 上映時間:122分 R15+
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:トッド・フィリップス
製作:トッド・フィリップス、ブラッドリー・クーパー、エマ・ティリンガー・コスコフ
脚本:トッド・フィリップス、スコット・シルバー
「ジョーカー」のキャスト
ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ、フランセス・コンロイ
「ジョーカー」のあらすじ
孤独で心の優しいアーサー(ホアキン・フェニックス)は、
シネマトゥディ
母の「どんなときも笑顔で人々を楽しませなさい」という言葉を
心に刻みコメディアンを目指す。
ピエロのメイクをして大道芸を披露しながら母を助ける彼は、
同じアパートの住人ソフィーにひそかに思いを寄せていた。
そして、笑いのある人生は素晴らしいと信じ、底辺からの脱出を試みる。
「ジョーカー」の感想・考察
バットマンの天敵・ジョーカーがいかに生まれたかを描いた映画だが、主人公のアーサーがとにかく救われない。
アーサーは母親に言われた通り「人を笑顔にしたい」とピエロの仕事をしている。父親はおらず、年老いた母親を介護しながらだ。もうここだけで泣きそうだ。
そして自分は虐待を受けていた影響で、突然笑ってしまうという精神病を持っており、生活保護を受けている。
そんな献身的に生きているアーサーだが、子供達には看板を盗まれ、殴られ、同僚にも騙され、上司にはクビを切られ、挙げ句の果てには母親にも裏切られる。
これ以上ないくらいに詰んでいる。
こんな状況で、どうして狂わないでいられるだろうか。おかしいのは彼か世の中か。このうちどれかがあるだけでも病気になりそうである。
そして、あの異形のものと本能に感じさせるアーサーの身体。上半身が裸になるシーンでは、極限まで絞った体で肋骨や肩の骨などが隆起していて不気味さを醸し出している。
●ドラッグのような構成
冒頭にドラッグのようだと書いた理由。
それはすべての境界をあいまいにすることで、観客が錯覚するように作られているから。
たとえば、舞台はゴッサムシティなんだけど、貧困層の日常をリアルに描いていて、浮世離れしたものが出てこないから現実と区別がつかない。街が荒廃しすぎているから現代ではないとは認識できるが、少し前のアメリカかな?ぐらいにしか思わない。
そして、アーサー主観による妄想と現実との混在。
ソフィーとの関係もドアを開けていきなりキスしたり、デートに行ったり、母親の看病をいっしょにしたり、これらも全部妄想だとあとでわかる。なぜならソフィーの部屋に勝手に入ったときに彼女が驚いて「確かアーサーよね?」と確認するから。彼氏にそんなことは言わないだろう。
突然笑い出してしまう病気はサインにもなっている。マレーの番組に観客として参加し、生出演するシーンは妄想だが彼の笑いが観客にもウケていて、そのシンクロが妄想だと気づかせる(普段はズレてしまうので、ウケない)。
勧善懲悪の境もあいまいだ。トーマス・ウェインは息子(アーサーの思い込みだが)を見捨てる、無慈悲な悪役に仕立て上げられている。劇場裏で妻ともども殺されるのも必然かのような流れだ。
なお、暴漢が殺すような形になっているが、この暴漢はジョーカーに感化されており、間接的な殺害という関係につながっている。
現実と妄想との区別を考えているうちに、ジョーカーの主観に吸い寄せられる。ただの観客としての客観的なものではなく、第一人称の視点に錯覚させるところにこの映画の稀有さ、面白さがあると感じた。
●「ジョーカー」がつまらないと感じる理由
とは書いたが、それでもつまらないという人はいるだろう。それはそうかもしれない。
なぜなら抑揚、メリハリがないから。
言い方は悪いが、ただの貧しい家庭のピエロで生計を立てている不幸な人間の日常を見せられているだけだ。上に書いたような観点で映画を楽しめない場合は、鬱屈とした映像が続くだけなので、「つまらない」「退屈」となるだろう。
だんだんと堕ちていく様
ただあえて言うと、そのあらゆる意味で不幸かつ純粋な人間がいかに狂気の殺人者に成り下がっていくか、徐々にそのリミッターが外れていくところにこの映画の魅力がある気がする。たしかにゲンナリはするが。
大まかなステップとしては2つ。
同僚から渡された銃がきっかけで仕事をクビになり、それまでのストレスが暴走し、3人を殺害。そのあとには憧れの存在だったマレーに笑い者にされ、彼を銃殺するところで完全なヒールが誕生する。
マレーの番組に向かう途中の階段は有名だ。巧妙にアーサーとジョーカーのスイッチを表現している。
上るときはアーサーで、ジョーカーとして下りてくる。上っているときはいつも苦しそうで、そこからなんとか這い上がろうとしている。下りるときは因縁の同僚も殺して、気が触れているのでタバコを吸いながらノリノリで下りてくる。
「ジョーカー」の感想まとめ
監督のトッド・フィリップスは社会批判の気はないと言っているようだが、この映画を見たら誰だって疑うだろう。
アメリカだけでなく世界に広がっている貧困問題、格差社会は、こういった人間を犯罪に駆り立ててしまう可能性がある。そして、それは他の誰かではなく、自分かもしれない。明日は我が身。
人生はいともたやすく壊れ得るということ。そしてそれは「いまそこにある危機」だということを痛烈に感じる、生々しい映画だった。
そういう「感覚が鋭敏になる」という意味でもやはりドラッグっぽかったのかもしれない。
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