【マチネの終わりに】感想|人間の愛と業が交錯した、詩のように繊細で美しい物語(映画ネタバレあり感想)
公開日:2019/11/02 更新日:2020/03/1111/1に映画「マチネの終わりに」の上映が開始。
予告編を見て、
「福山雅治・石田ゆり子主演」
「大人のラブロマンス」
「映像の世界観」
「原作:平野啓一郎」
このキーワードで直感的に「見たい!」と思った。そして、速攻予約。初日に見てきた。
福山さんも石田さんもインスタでフォローしているので、2人からの告知投稿がバンバン来てたのも、ボディブローのように効いたのかもしれない。
タレントの宣伝行脚、地味に来る。
40代の男女の恋愛がテーマだけど、なんかこうも人生は上手くいかないものかと諭される。すれ違い、遠回りし続けるのが人生なのかなと考えさせられた。
終わったばかりでまだ心はあの物語の中に取り残されている感じ。
切ないけど、まだ浸っていたい気になる。
そんな心境を整理しつつ、映画「マチネの終わりに」の感想や考察を書いてみる。
<2019/11/12 追記>
「マチネの終わりに」
— Daiki Murakami (@sfcdaikick) November 12, 2019
ポスター作ってみた。
ギターだけでなく
音楽も映像も
世界観がクラシックだったので
大人の感じに。#マチネの終わりに#マチネの終わりに感想 #福山雅治 #石田ゆり子#matineehttps://t.co/BBfjRTQXvo pic.twitter.com/KRrMXoYzma
「マチネの終わりに」
ポスター作ってみた。ギターだけでなく
音楽も映像も
世界観がクラシックだったので
大人の感じに。
<2019/12/21追記>
「マチネの終わりに」の感想投稿キャンペーンなるものがやっていたので参加。感想をハッシュタグつけてツイートする、というもの。
そしたら、パスポートケースが当たった!福山雅治、石田ゆり子のサインが欲しかった。。
「マチネの終わりに」の感想投稿キャンペーン参加したら、パスポートケース当たった!
レザーで質感がしっかりしてる。
別の賞品の福山雅治、石田ゆり子サイン欲しかったなぁ。
まぁ、ちょうど24日からバンコク行くからちょうどいいか。
感想はブログにも書いてます。
目次【記事の内容】
「マチネの終わりに」の概要
2019年/日本 上映時間:124分
配給:東宝
監督:西谷弘
原作:平野啓一郎
脚本:井上由美子
「マチネの終わりに」のキャスト
福山雅治、石田ゆり子、伊勢谷友介、桜井ユキ、木南晴夏、風吹ジュン、板谷由夏、古谷一行
「マチネの終わりに」のあらすじ
世界的なクラシックギタリストの蒔野聡史は、
映画『マチネの終わりに』公式サイト
公演の後、パリの通信社に勤務するジャーナリスト・小峰洋子に出会う。
ともに四十代という、独特で繊細な年齢をむかえていた。
出会った瞬間から、強く惹かれ合い、心を通わせた二人。
洋子には婚約者がいることを知りながらも、
高まる想いを抑えきれない蒔野は、洋子への愛を告げる。
しかし、それぞれをとりまく目まぐるしい現実に向き合う中で、
蒔野と洋子の間に思わぬ障害が生じ、二人の想いは決定的にすれ違ってしまう。
互いへの感情を心の底にしまったまま、
別々の道を歩む二人が辿り着いた、愛の結末とは―
「マチネの終わりに」の感想
いやぁ、果てしない。
大人になってからの恋愛、そして人生というのは、こうも奥深く、切なく、果てしないのか。それを見せつけられた。
40代。人生でもっとも円熟し、ピークを迎える時期。
蒔野のスランプも、誰かに恋い焦がれてしまうこともこれから起きることなのだろうか。
40代になる来年以降にその答えがわかるのだろうか。
出会ってから6年。2人の間には本当にいろいろなことが起きる。悲喜こもごものオンパレードである。
お互いに強く惹かれあっても、周囲の妨害にあったり、いろいろな事情でこうも事態がこじれてしまうと、本人の思う通りにならないかと思うと切なくなり、絶望的になる。
若者の恋愛と決定的に違い、1つの決断、行動に責任が伴い、慎重になるゆえか。
これだけのトラブルやハプニングがあっても、お互いにたどり着いた。
蒔野、洋子ともに本当に心救われるのは、本当に愛を感じるのはお互いにしか見出せなかった。
一方ですべてをかなぐり捨ててでも手に入れたいと願う人間の業。
その人間の愛と業が交錯したような、とても重たいものを負わされるような感覚に苛まれた。
恋愛小説というか、聖書のようなテーマと詩のような美しさを合わせた愛の物語という感じ。
マチネとは
マチネとはフランス語で「朝」という意味。それが今ではズレて昼公演のことになっていて、その状況が今の世代と似ていると平野さんは捉えた。
恋をする時期も今では後ろにずれ込んでいる。その時期も終わり、人生の後半にさしかかっている、という意味合いもある。
※ここからはネタバレを含みます。
感想① 出会いの瞬間
何も言わなくても相手のことがわかる。初めて会ったのに、ずっと前からいっしょにいたかのような関係。
そんな関係性を少ないセリフと描写で表現していて、その感覚に共感した。
たとえば蒔野が新幹線で音楽評論家に会った話で、洋子が「本当は評論家に謝ったんでしょ?」と言って何も言ってないのにわかっているところとか。
このシーン以外にも2人でいるときの空気感がとにかく絶妙。
感想② 言葉
“人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で感じやすいものじゃないですか?”
映画「マチネの終わりに」蒔野のセリフ
初めての出会いで蒔野が洋子に対して、放った言葉。実に深い。
それくらい繊細で、感じやすいものだからそこに感じいるのがまた40代ということか。
今まで「過去は変えられない。現在があるだけ」と思って生きてきたので新鮮だった。
感想③ 映像
監督は「容疑者Xの献身」「真夏の方程式」と福山さんと組んできた西谷弘監督。撮影は「生きてるだけで、愛」という作品を撮影した重森豊太郎さん。
今回の映画は東京、パリ、ニューヨークが舞台になるが、どこを切り取ってもその場の空気が伝わってくるというか、素晴らしい映像だった。なんでもないシーンに見えるけど、構図とか画作りがすごかった。
どのシーンもその街の美しさを捉えていてきれいだった。
ポスターの撮影も重森さんだろうか。「好きだ、」「blue」みたいな淡く、印象的で最高。
<2020/1/18追記>
このポスターの写真が素晴らしいなぁと思っていたら、石田ゆり子さんのインスタでフォトグラファーを紹介していた。
ポートフォリオやSNS用のプロフィール写真が欲しいなと思っていたので、ダメ元で写真をお願いしたら撮影してくれた!
「マチネの終わりに」のポスタービジュアルがとても好きだ。
プロフィール写真撮って欲しいなと思ってたら、石田ゆり子さんがインスタでフォトグラファーを紹介してて。
ダメ元でDM送ったらたまたま東京にいてまさかのOKもらって、今日気温3°、雪の中撮影してもらった。
この間3日。行動って大事。
感想④ 音楽
今回は福山さんの設定がクラシック・ギタリストということで、福田進一さんが音楽監修をしている。
普段あまりクラシックは聞かないが、クラシック・ギターの独特な旋律が今回の映画と非常にマッチしていて、よかった。
上質な音楽ばかりで、とくに予告編などでも使われている「幸福の硬貨 組曲」はすごくよかった。
福山さんのラジオを聞いたのだが、福山さんのクラシック・ギター挑戦もやはり大変だったそう。
手があまりに動かないので、形にならないのではと思った。そして、手だけのタレントさんを探しておいてほしいと西谷監督に提案したそうだ。最終的には自分で演奏したらしいだが、やはり奥が深い。
ギターをやってるだけにその難しさがわかるという。
感想⑤ 演出
あと鮮烈だったのが、洋子が蒔野からメッセージで別れを告げられた瞬間の演出。
フランスでのテロでPTSDの症状が出ていた洋子が、別れのメッセージを受け取った後。奇しくもテロに遭ったときと同じで1人エレベーターの中でその衝撃さゆえにPTSDの症状が再発する。
天気は雷雨。洋子の心情を言葉を一切使わず、その状況だけで雄弁に語っていて、巧みだった。
蒔野の初めてのコンサートのようにいつもは走らない、落ち着いた洋子が、6年越しにNYのコンサートに向かうときには走っていたのもそのときの胸の高鳴りを表していて伝わった。
感想⑥ 演技
福山さんと石田さんの2人は奇跡みたいな存在。本当にきれいだったんだよね。
外見ももちろんそうなんだけど、所作とか話し方とか全部。それでいて空っぽ、無機質に感じなかった。
繊細さとたくましさが同居した洋子には心奪われた。そりゃ惚れるわ。
それにしても、石田さんはパリに映える。
今回の役柄、40代の色気なんかを考えるとこの2人しかいなかっただろう。ただ、英語やフランス語を話すシーン、1人で泣くシーンはリアリティを感じられなかった。
そして早苗役の桜井ユキさんは演技すごかった。あの難しい役を何の違和感もなく、リアリティを持って演じてた。
「マチネの終わりに」の考察・疑問点
ラストシーン・結末の解釈
このまま2人が会わなければ、「ラ・ラ・ランド」のように悲恋物語。
しかし、そうはならない。しかも出会う直前で映画は終わってしまう。
ここがこの映画の肝だと思う。結末は観客の想像力に委ねられる。
私はこのシーンを見たときなぜかテロか何かにあって、2人あるいはどちらかが事故に見舞われるんではないか、と直感的に思った。
そして離れば離れになる。
理由はない。ただ、結ばれると思った瞬間に引き裂かれる。
仮に事故に遭わなくても、このまま2人は結ばれるのだろうか。蒔野は奥さん、子供もいる。
2人の優しい性格がそこを引き裂くことを許すだろうか。
結ばれそうだけど結ばれない。そんな運命の最中にこの2人はいるのではないか、と感じさせる何かがあるのだ。
それでも強い引力で関係性は続くのだろうけど。
もちろんいっしょに幸せになってほしいとは思うが。
さまざまな愛の形
事前情報はまったく入れていかなかったので早苗の妨害は普通に驚いた。
「なんでそんなことすんの!?」
って本気で思った。そんなことしてもすぐバレるし。
でも、それをやってしまうのが早苗なりの愛なんだろう。
蒔野もそれを知って愕然とするが、最終的には許している。
洋子もショックを受けるが、許す。
ここがこの2人の大人としての優しさだ。それゆえに最後の最後で自分が幸せになることを選べず、遠回りをしてしまう。
お互いや周りの人を思うがゆえの愛。
そして、洋子のクロアチア人の父親が社会からの非難に合うのを避けるために離婚した、というくだり。
洋子は長崎で蒔野と別れた後に母親からその真実を聞かされる。
蒔野と自分の関係もそこに重ねて、相手を想って別れるという考え方もよぎったのではないか。
最終的に蒔野を救った早苗
蒔野はスランプに陥っていた。
そこで早苗と結婚し、子供を産む。
最愛の人ではないだろうが、それでも心は落ち着きを取り戻したのか。
最終的に師匠の追悼アルバムをきっかけに復帰することを決意。新曲も作り、コンサートをNYで実施。
そこにいたるまでには確実に早苗の献身的な愛があった。
そういった視点で見ると、早苗は蒔野をスランプから救ったとも言える。
スランプから救い、華麗な復活を遂げて、洋子と再び会えるその日までを、無様でも、蔑まれても、用意したのは早苗なのだ。
狂気ではあるが、なんと献身的な愛だろうか。
映画「バースデイプレゼント」を彷彿とさせる設定
東京・パリが舞台、音楽は福山さんが担当、相手に自分の作品を届ける、という点で好きな映画「バースデイプレゼント」(1995年)を思い出した。
バブル期を思わせる派手なキャストだが、岸谷五朗さんの演技が大好きな自分としては最高な作品の1つ。
ラストシーンの「君に会いたかった」は名演。
「マチネの終わりに」感想まとめ
見終わっていろいろ考えているうちにどんどん物語が映像や音楽とともに脳内で反芻されていく。
愛するということ。
愛されるということ。
生きていくこと。
人生の折り返し地点を迎えた40代の男女が悩み、愛し、生きた軌跡。
それが繊細に、丁寧に、かつ美しく描かれた映画だった。