【ラ・ラ・ランド】感想|ストーリーと調和した新しいミュージカル映画だが、◯◯◯◯が足りない(映画ネタバレ感想)
公開日:2017/03/05 更新日:2020/02/16大好きなミュージカルネタ&『セッション』のデイミアン・チャゼル監督ということで仕事帰りに見てきた。
テーマがあまり扱われないアーティストの夢と恋愛ということで結構期待していたけど、何だろう。何かが足りない気がする。
音楽、演出、演技などどれもいいはずなのになぜだろう?
そう思っていたら気づいた。◯◯◯◯が足りないということに。
「ラ・ラ・ランド」がなぜいまいちだったか、どんな映画だったか感想とともにまとめていく。
目次【記事の内容】
「ラ・ラ・ランド」の概要
2016年/アメリカ 上映時間:128分 配給:ギャガ、ポニーキャニオン 監督:デイミアン・チャゼル
「ラ・ラ・ランド」のキャスト
ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、キャリー・ヘルナンデス、ジェシカ・ローゼンバーグ、ソノヤ・ミズノ
「ラ・ラ・ランド」本予告
「ラ・ラ・ランド」のあらすじ
夢を叶えたい人々が集まる街、ロサンゼルス。映画スタジオのカフェで働くミアは女優を目指していたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。ある日、ミアは場末の店で、あるピアニストの演奏に魅せられる。彼の名はセブ(セバスチャン)、いつか自分の店を持ち、大好きなジャズを思う存分演奏したいと願っていた。やがて二人は恋におち、互いの夢を応援し合う。しかし、セブが店の資金作りのために入ったバンドが成功したことから、二人の心はすれ違いはじめる……。
映画「ラ・ラ・ランド」公式サイト
「ラ・ラ・ランド」の感想
たしかによかったけど、期待が高すぎたからかそこまでよいと思えなかった。想像を超えて欲しかったので少し残念。
ストーリーがまったく違うから仕方ないけど、どうしても「セッション」と比較してしまう。それほどにあの作品は鮮烈だった。
この映画は端的に言うと映像、音楽、ダンス、恋愛、演技、夢なんだけど、全部パーツなんだよね。
「夢を叶える」というストーリーのプロセス、努力だったりがほぼ描かれていない。で、その軸を恋愛に設定しているから少し空虚に感じる。
ハリウッド女優になるなんて、あなた相当大変よ?
だけど、オーディションに落ちまくって落胆しているミア(エマ・ストーン)はセブと恋に落ちて、ぶつかり、励まし合い、何とか夢を叶える。
って、夢叶えるのはやっ!!
恋愛だけで、乗り越えられるそんな簡単なものじゃないだろう。
セブにしても、ミアにしても元々才能はあったのはわかるが、あっさりしすぎているからか絵空事に見えてしまった。
だから確かに映像や音楽、ダンスとかは素晴らしいけど、「夢を叶える」という点には感情移入もあまりできないし、劇場を後にしたら「あれ、何がよかったんだっけ?」となってしまう。
でも、まぁ、ミュージカル映画って本来歌って、踊ってたらいつの間にか夢が叶ってた、みたいなものか。
そう思えばエンターテイメントとしてはありなのかもしれない。
ミュージカル映画としては新しい取り組みをしていたし。
テーマは「アーティストの夢と恋愛」
ストーリー自体は結構オーソドックスで、特筆すべきところはなかったんだけど、感情すべてを歌やダンスで表現しようとせずに、むしろストーリーの中で自然に見せたところが今までのミュージカル映画と一線を画すというか、違うところだったのかもしれない。
ミュージカル映画は大体感情の喜怒哀楽を歌とかダンスで表現する。だから急に歌い出すし、嫌いな人もいると思うけど、これはまったくそんなことはなくて、ストーリーに寄り添うように歌やダンスがあって、ごく自然に調和している。
だからストーリーも頭に入ってくるし、キャストの気持ちをリアルに感じることができた。怒哀のときは歌わずに表現するあたり、チャゼル監督ってやっぱりストーリーで見せたり、リアリティを持たせることにこだわっているのかな。
映画に説得力を持たせる演出
印象的だったのが演出。ダンスシーンや歌のシーンで色彩豊かに撮ったり、照明をピンスポットだけで照らしてドラマティックにすることで観客を引き込んだり、特定の音だけ際立たせる音響だったり、すごくよかった。
特に最初の二人の丘の上でのダンスシーンと、港でライアン・ゴズリングが一人で歌いながら踊るシーンの背景の景色がすごかった。
どっちのシーンも、日が完全に落ちる直前の、一日の中でも少ししかない「黄昏時」だったんだけど、よく撮れたなぁと感心してしまった。あの長いダンスと完全にタイミング合わせないと難しいだろう。条件考えるとCGだったのかもしれないが、見分けがつかなかった。
いずれにしても、あのシーンでは人の心がしんみりとする黄昏時である必要が絶対にあったんだろう。人を描くときの、演出に対する強いこだわりが見えた瞬間だった。
どハマりのキャスティング
ライアン・ゴズリングのピアノの演奏はしびれた。夢や恋愛に挫折した、裏寂れた感と哀愁を表現させたときの存在感は物凄い。滲み出てる。
エマ・ストーンとの喧嘩のシーンは傑作『君に読む物語』のレイチェル・マクアダムズとの喧嘩を彷彿とさせた。チャゼル監督も影響受けたのかな?しかし、ダンスにピアノに歌に、どんだけ器用なんだ…
エマ・ストーンはこの作品でアカデミー賞の主演女優賞受賞したみたいだけど、相変わらずチャーミングで素敵でした。
可愛くてスタイルいいのに、三枚目が似合うというか、昔のキャメロン・ディアスみたいな存在感で、コメディとしてめっちゃハマってました。女優の卵の役だったんだけど、オーディションに落ちまくって、ズタボロになったり、泥臭いところも等身大ですごくよかった。
悲哀を際立たせるエンディング
見た直後は観客の期待や妄想を表現してくれたのかな?と思って、あまり落差ない落とし方だなぁと思ってた。ただ、思い返すとあれは悲哀をよりドラマチックにするためのスパイスだったのだと、数日経ってじんわりと伝わってきた。
誰にでも人生で一度は考えたことのある、岐路に立たされたときの「選ばなかった道のその先」。「今はもう叶わないけど、あのとき違う選択をしていたら…」。
あのシーンは二人が再会したあの瞬間に、二人が同時に描いた空想だったのだ。
実際の二人にとってはほんの1曲分、数分の走馬灯だったのだろう。二人の「今」がその人生とは違う道を歩んでいてもう戻れないこと、その人生に二人とも満足していること、そして、お互いに心から愛していて応援していること。
そういった二人だけにしかわからない想いや言葉が、無言にもかかわらずとめどなく押し寄せてきて切なくなる。
超絶素晴らしい映画とまでは感じられなかったが、いい映画には違いない。ただ、こういうエンタメの王道みたいな作品じゃなくて、テーマを絞って1つのことを追求する単館系のニッチな作品の方がチャゼル監督には合ってる気がする。次に期待。
ラ・ラ・ランド(字幕版)
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