コンセプトづくりやプランニングに必要なクリエイティブ・ディレクションとは何か【AdverTimes Days 2017 レポート】
公開日:2017/05/01 更新日:2019/10/03講演内容
企業が自ら情報・コンテンツを発信し、かつそれをSNSやWebなどダイレクトに消費者に伝えることのできる時代。ブランド・コミュニケーションを考えても、「どんなメッセージを伝えるか?」だけでなく「どのように伝えるか?」、その企業らしさ(人格や立ち居振る舞い)まで、トータルで考える必要が生まれています。ワコール、ヤマハ発動機は一般的に、ブランド力の高い企業として認識され、耐えまずコーポレートブランディング活動を続けている歴史を持っています。その企業「らしさ」をどう、社内・社外パートナーで共有し、コミュニケーション活動の中で表現をしていらっしゃるのか。2社の考えと取り組みについて、ディスカッションします。
登壇者
株式会社ワコール 総合企画室 広報・宣伝部 部長 猪熊 敏博 氏
ヤマハ発動機株式会社 執行役員 デザイン本部 本部長 長屋 明浩 氏
自己紹介
◆ヤマハ発動機 長屋氏
●「発」するデザイン
創業者:山葉寅楠 音楽も発動機も同じ創業者
企業目的:感動創造企業 ブランドスローガン:Revs your Heart
コンセプトモデルの提案 東京モーターショー2015に出展の四輪デザインコンセプトモデル 「Sports Ride Concept」
物作りの3本柱 ・独創的なコンセプトを提案する ・卓越した技術を実現する ・洗練された躍動美をデザインする
経営・ブランド・マーケティング 手を動かすのはシンジケートとして外注 経営レベルでデザインを捉える
◆ワコール 猪熊氏
●より美しく
ワコールの目標 女性に美しくなってもらって社会に寄与すること
社是 わが社は相互信頼を基調とした 格調の高い社風を確立し一丸となって 世界のワコールを目指し不断の前進を続けよう
「生活とアートの融合」をコンセプトとした青山の複合施設「スパイラル」も展開
パネルディスカッション
・企業らしさとは
長屋氏 自分はトヨタからヤマハに来た外人のような存在 でも会社からするとお客様に近い存在 いかに”らしさ”を色、形に落とすか 社内に向けて”らしさ”を言うと大体違うといわれる 社外に向けて言い続けていって外と共有してから、中と共有するとそうなんだなと伝わっていく 鏡に写して見ると初めて自分の姿が見えるのと似ている
人材教育の一貫としてデザインハッカソンを実施 学生にチームを組んでもらってダンボールを使って実際に乗れる物を翌日提案する
猪熊氏 “らしさ”、”企業理念”は押し付けるとダメ 言葉作ったり、雰囲気的に伝えていくことが大事 思想を人事教育に入れたり、デザインに反映していく ワコールではCSRとして学校教育にも参加しているが、その授業の中で思想を伝えていくこともやっている
長屋氏 音楽と乗り物で全く違う領域のため “ヤマハらしさ” をどう表現するか悩んだ そこで「project AH A MAY(プロジェクト アーメイ)」を実施 「ヤマハ音楽」「ヤマハ発動機」のデザイン部門がお互いにデザインするものをスイッチしてやってみた 乗り物のデザイン側からすると、「楽器に乗ってしまえ」という発想になる 演奏しにくいし、プロからするとこれを演奏するなんてとんでもないと散々言われた ただ、これをやることで、「タイムレス」「ネイキッド」「フィニッシュをこだわる」などの共通性が見えてきた
猪熊氏 コーポレートとプロダクトのブランドを統一させるのは難しい ワコールでは「優雅良質」 優雅で品があるものを一つの基準としている
長屋氏 「悦」「信」=ヤマハらしさと定義 機能性と感覚的価値の両方が必要 ヤマハ合同デザイン展に「project AH A MAY」の楽器を一般公開して、利用できるようにしている 一般の人とのコミュニケーションを通じてその場でフィードバックをもらっている これからはいろんなものをつなげた価値が必要 肉声など空気感、立体的に伝えていくのが大事で、それが日本企業の強み、価値でもある
猪熊氏 温故知新=日本人の良さ 今まで培ってきたものを今のトレンドに合わせて変化させていくことが大事 社内では仕事をするときには「to you」ではなく「with you」だと伝えていて、さらにそれが「for you」になるといいと伝えている 革新があるから伝統がある
所感
終わった後、長屋さんの出で立ちと発言内容しか記憶に残ってないというぐらい鮮烈だった。前回レポートの「トイザらス」「富士フイルム」と同様、どちらも歴史ある企業で企業理念に基づいてブランドをどう伝えて行くかを考えていたが、長屋さんは前任者や今までの歴史を否定することなく、そこに自分の解釈を入れて、独自にブランドを発展、革新させようとしてるのがすごかった。
やってる取り組みも変わっているというか、狂っている。デザインフィールド入れ替えるなんて、よく社内で合意したな…。”外人” 長屋さんだから通すことができたのか。乗れる楽器とかも今のご時世だと危ないとかコンプラチェックに潰されるだろうに、そのあたりの実行力も半端ではない。 経営をデザインの視点で取り組んで組織づくりしているのは、ユニクロとか世界的な企業が導入している「デザインマネジメント」だし、IT業界の取り組み「ハッカソン」の概念を持ち込んだり、音楽との合同展やってユーザーの反応聞いたり、やってることが「オープンイノベーション」そのものでとにかく先進的。発想や取り組み自体にデザインが活きているのが最高。
個人的には「感動こそが人生」と思っていて、また最近日本企業のデザインに対する価値の低さが気になったり、「デザインマネジメント」「デザイン思考」がキーワードとして引っかかっていたので、どストライクで超絶に魅力的に見えてしまった。こんな先進的な取り組みしてる面白い企業が日本にあるんだと知って驚いたと同時にワクワクした。
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