【君の名は。】予想をはるかに裏切る面白さ。「運命の恋」を軸に日本人向けにメッセージを込めた名作(映画ネタバレ感想)
公開日:2016/10/17 更新日:2020/02/09ようやく見てきた。上映して結構経つが未だに満員。すごい人気だ。これ見てからRADWIMPSの「前前前世」が頭から離れない。脳内ヘビロテ。
いやぁ、すごかった!晴天の霹靂!!
まさか新海誠監督がこんな作品作(れ)るなんて。秒速5センチメートル見て、ただの自己満足な作品だなと思ってたのに。
おそらくほとんどの人は見たであろう「君の名は。」。その魅力ともに感想と考察を書いていく。
目次【記事の内容】
「君の名は。」の概要
2016年/日本 上映時間:107分
配給:東宝
監督:新海誠
「君の名は。」のキャスト
神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子、成田凌
「君の名は。」予告
「君の名は。」のあらすじ
1,000年に1度のすい星来訪が、1か月後に迫る日本。山々に囲まれた田舎町に住む女子高生の三葉は、町長である父の選挙運動や、家系の神社の風習などに鬱屈(うっくつ)していた。それゆえに都会への憧れを強く持っていたが、ある日彼女は自分が都会に暮らしている少年になった夢を見る。夢では東京での生活を楽しみながらも、その不思議な感覚に困惑する三葉。一方、東京在住の男子高校生・瀧も自分が田舎町に生活する少女になった夢を見る。やがて、その奇妙な夢を通じて彼らは引き合うようになっていくが……。
「君の名は。」の感想・考察
予想をはるかに裏切る面白さ
実は今回、見る前にあまり期待はしていなかった。
前に見た『秒速5センチメートル』が、現実の男女の出会いと別れがテーマだったんだけど、じれったいというか、女々しいというか、結末もひどいし、あまり面白くなかったのだ。
だから、周りが面白いと言って、こんなに人気が出ても、「またまたぁ」ぐらいに思っていた。
秒速5センチメートル
そして、今回ようやく見たのだが、ごめん。超面白かったよ。
なんだよ、聞いてないよ。こういうの作れるのかよ。
テーマは恋愛だし、クスッとした笑いもあるし、中盤以降はアクションで盛り上がるし、最後は泣けるし、みんなが楽しめるエンターテイメントの王道みたいな映画じゃないか。純度100%のデートムービーだったよ。
これだけ人気になって、みんなが絶賛するのもわかる。
「映画館で好きな人と見るべき映画」なので、食わず嫌いやまだ見てない人は見ることをおすすめします。
これ、高校生のときに好きな子と見てたら、興奮しすぎて、ヤバいだろう。映画館出た瞬間に「前前前世」歌い出して、そのノリで告白してたかもしれん。
日本人に向けられた、日本的な映画作品
※ここからネタバレあります。
あらためて考えると、とても日本的な映画だったなと。
日本の都会と田舎の情景描写を美しく描いたアニメーション、ストーリーに論理を破綻させないための「巫女」という設定、震災が起きた日本で、日本人に対してこそメッセージがより伝わるストーリー。
こういった要素が映画をより印象的にしていたように思える。
「運命の恋」を中心にして、非常に深いメッセージを巧みに込めた名作。
あとは、ストーリーじゃなくて、音楽が主役になりがちなところも新海監督らしく、特徴的だった。
日本のトップアニメーターたちによる美しい日本の景色
『秒速5センチメートル』では、日本の四季や田舎の風景などが印象的だったけど、今回も映像が美しい。
特に夜空にすい星が流れるシーンは映画館で見ると、本当に綺麗で引き込まれる。
今回は都会と田舎が舞台だったけど、日本人なら共感できるような描写がたくさん出てくる。
登場人物が友達と校内で話すシーンでは、都会は屋上、田舎は広い校庭。
溜まり場は、都会はカフェ、田舎はベンチと自販機など、対照的に描かれていたり、でもどちらも日常のワンシーンを切り取ったよう。
実態に近くて、「あぁ、こんなところあるわ~」と思った。
主人公の2人が新宿近くの交差点ですれ違ったりするところとか、いつも通ってるところだったり。
それ以外にも代々木や四ツ谷とかが出てくるあたりも、映画の中の運命の恋が現実にすぐ身近で起きていたみたいに錯覚して、リアルに感じられてよかった。
エンドロール見ると、庵野監督のプロダクションやら錚々たるアニメーションの会社が関わっていて、関わった人数含めて、錚々たるメンバーを集めたからこその作品なんだなと納得。
物語に説得力を持たせる設定
「三葉=神社の巫女」という設定が、このぶっ飛んだ物語を支えている。
神社で「東京のイケメンになりたい」と叫んだ願いが本当に実現して入れ替わったり、
口噛み酒を飲んで入れ替わったり、
組紐を編んでそれが2人をつなぐ運命の糸になっていたり。
現実には結構浮世離れした話なのに、特に疑問を持つことなく、ストーリーに入っていけたのは、この「巫女=神の遣い」という設定のおかげだったなと。普通、誰からもらったか覚えてない組紐を腕に巻かないだろう。
ちなみに二人を縛っていた紐が運命の糸になっていた、という演出は北野武監督の『dolls』を彷彿とさせられた。
自然災害により滅びた街
これはいろんな人がもう気づいてるし、書いてるけど、すい星による街の崩壊は “東日本大震災” のことを明らかに指していた。
この誰もが共感しやすい壮大なラブストーリーを通して、東日本大震災で何万人という規模で亡くなられた、名前も知らない方々。
その方々の存在を風化させないように、この映画を見た人、特に日本人が忘れないように、というメッセージを込めて「君の名は。」というタイトルにしたのかもしれない。
映画ではなく、もはやミュージックビデオ
RADの音楽、特に「前前前世」はこの映画のために書き下ろされただけあって、最高にハマっていた。
この曲がなかったら、RADが歌ってなかったら、興行成績は半分も行かなかったんじゃないか。それだけの相乗効果があった。
前前前世 (movie ver.) RADWIMPS MV 映画見てからこのMV見ると、なぜ映画のシーンをMVに使わなかったのか謎なほど
むしろ、ストーリーやアニメーションが音楽の引き立て役になっている印象すらある。
もはやRADのMV。RADファンはたまらないだろう。
ただ、いいシーンもボーカルが入ってることで邪魔して、入ってこないところもあったのは少し残念。
新海監督って、映画作りたいんじゃなくて、MV作りたいんじゃないか。
オープニングも、まだ何もストーリー始まってないのに、いきなりアニメのオープニングみたいなタイトルバックでBGM流したり、終盤や最後にかけてのシーンでRADのいろんな曲が流れたりして、驚いた。
どう見ても、ボーカルなしのインストでよかったのに。RAD好きな僕が、音楽がうるさいと思うのだから、RAD知らない人はもっと強く思っただろう。
もっと場面に合わせた音楽にすれば、最高の傑作になったのにもったいない。それでも、素晴らしい映画には変わりないんだけど。
と書いてたら、ネットの記事で新海監督がRADのこの曲を聴いて、あらたにシーンを作り直したというのを読んで、ますますどっちが主導権があるのかわからなくなった。
それほどまでの楽曲を作ったRADを賞賛すべきなのか。
「前前前世」の2番の歌詞を見て、衝撃を受ける
そんな「前前前世」だけど、2番の歌詞が鳥肌物だったので、どうしても語りたい。
「君は僕から諦め方を奪い取ったの」
というところがあるんだけど、ここは本当に野田さんっぽい、独特のひねった表現で最高にしびれた。ここだけ何回も繰り返し聞いている。
普通だと
「僕は君と出会って諦めることをやめた」
みたいなありきたりな表現になってしまうと思うんだよね。
そこを主語を入れ替えて、使役動詞っぽく、あえて婉曲的な表現にすることで、「君」に出会って諦めることをやめた、それほど強く運命に導かれたということがより伝わって、グッと来る。最高に素晴らしい。
遠回しにした方が、かえって人の心に強く残ると考えてのことなのか、リズム的に歌詞を埋めたのかわからないが、本当に独特なセンスだ。この詞はなかなか書けない。
しかも、作詞・作曲・編曲まで一人でやっちゃうって、やっぱり野田さんは天才か。
とにもかくも、いろんな要素があって、誰でも楽しめる作品なので、ぜひ鑑賞をおすすめします。
っていうか、見て。
新海誠監督の「天気の子」の感想・考察はこちら。
【天気の子】救われない世界で愛ができること(映画ネタバレ感想・考察)
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