【ズートピア】「夢」「差別」あらゆる要素を詰め込んだ至極のカオス的エンターテイメント!(映画ネタバレ感想)
公開日:2016/07/19 更新日:2020/02/09『アナ雪』『ベイマックス』とここ最近のディズニー2作品を劇場で見て面白かったので、今回も期待しつつ、いつも通り人混みが少なくなったであろうところを見計らって、見てきました。
全然人多かったけどな。
個人的には見てものすっごいよかった!キャラクターがとにかく愛らしくて、アクションや笑いなどエンターテイメントとしても面白い。
そして、何より裏にしっかりとした現代社会の問題点をテーマにしていて、それに気づくと大人はハッとさせられる。すごい作品。
ネットでも「傑作」と評価の高い「ズートピア」。今回はその作品の紹介とどんな感想を持ったか、書いていきたい。
目次【記事の内容】
「ズートピア」の概要
2016年/アメリカ 上映時間:109分
原題:Zootopia
配給:ディズニー
監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア
「ズートピア」のキャスト
ジニファー・グッドウィン、ジェイソン・ベイトマン、J・K・シモンズ
「ズートピア」のあらすじ
ハイテクな文明を誇るズートピアには、さまざまな動物が共存している。そんな平和な楽園で、ウサギの新米警官ジュディは夢を信じる一方、キツネの詐欺師ニックは夢を忘れてしまっていた。そんな彼らが、共にズートピアに隠された事件を追うことになり……。
シネマトゥデイ
「ズートピア」の感想
「夢」「差別」…あらゆる要素を詰め込みまくったカオス的エンターテイメント映画!
映画を観終わった後、真っ先に思ったのは「詰め込んだな~!」という感想。これに尽きる。
本当に面白かったんだけど、なんというか、それだけでは片付けられないようなモヤモヤした気持ちになった。面白いというよりは「すごい」という表現の方がしっくりくる。
詰め込みすぎた感もあるが、あえて繰り返し見られるように作ったのかと詮索してしまう。
『ズートピア』は『アナ雪』や『ベイマックス』のように一つのテーマではなく(『アナ雪』は「真実の愛」、『ベイマックス』は「友情」)、表面的には「夢を持つことの素晴らしさ」を描いているんだけど、実は人間を動物にたとえて「差別」や「人間社会の闇」を描いた二重構造になっている。
表面の部分をしっかり見せてるから、エンターテイメントになっているし、ストーリーの展開が実に巧みできれいにまとめられていて、大人も子どもも楽しめる(記事では触れていないが、アクションシーンも最高に楽しめる)。
ただ、大人が見ると、子どもといっしょに「面白いね~」などとのんきに言えないような作りになっているのだ。
なんか『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』を見終わった後の「映像はキレイだったけど、なんか重い気持ちになる」のと似てるかも。
大人も童心に返る、夢が広がる映像美と世界観
『アナ雪』、『ベイマックス』も映像美すごかったけど、今回はファンタジー要素がより強くて、すごい大好きな世界観だった。
特にジュディが田舎を出て、初めてズートピアに向かうシーンはこれから始まるワクワク感をジュディと同じ視点で体感できて、アドレナリン分泌しまくり。
街はファイナルファンタジーとかジブリを彷彿とさせる作りで、街の中の動物たち用のエレベーターとかの仕掛けもクリエイティブに溢れて面白くて、「その世界に行ってみたい」という没入感がハンパなかった。
個性あるキャラクターがとにかく可愛くて、映画のアクセントになっていて最高!
キャラクターもそれぞれ特徴を活かしていて、とにかく愛くるしい。
ハムスターは可愛いし(キャンディー食べるの早すぎ)、
ヒッピーはいるし
ゴッドファーザーへのオマージュかマフィアはいるし
ナマケモノなんかもう、たまらない。オチの使い方と言い、最高。
こういった可愛いキャラクターがいろいろ出てくるから、ストーリーが重くなっても、深刻になりすぎず、飽きずに楽しめた。
まぁ、ものすっごい重いテーマを描いているんですけどね…。
夢を持つことの素晴らしさ、そして、絶対にあきらめないことの大切さも教えてくれる
ジュディは昔から警察官になる夢を持っているが、周囲の誰もウサギが警察官になれるなんて思っていない。
両親ですら、まったく信じていない(こういう親いますよね)。
信じてるのは本人だけ。いじめっ子と対決した後の発言も「ギデオンは一つだけ正しいことを言ったわ。私はあきらめが悪いの」。
警察官になるまでも、なってからも数々の試練があるけど、それに立ち向かっていく姿がタイムリーに先日のイチローの発言「僕はいつも人から笑われてきた。悔しい思いをしてきた歴史が僕にはある。」と重なった。
あきらめずに、自分から動きだすこと、動き続けることが大事。
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差別する側とされる側を主人公&パートナーにして、現代社会の問題の本質を描く
※以下、ネタバレ含みます。
正義感の強いウサギのジュディと詐欺師のヒールなキツネ、ニック。この差別する側(ジュディ)とされる側(ニック)が反発しながらもパートナーとなって関係性を構築していくところにこの映画の醍醐味がある。
思えば、映画の舞台は草食動物と肉食動物が共存する世界とは言え、お互いが信頼し合っているシーンというのは描かれていない。
市長のレオドア(ライオン)は副市長のベルウェザー(ヒツジ)をこき使っていて、ベルウェザーから「ヒツジ票を集めるために副市長にしている」と影で言われているし、ニックはアイスキャンディーを買おうと並ぶと店員の象に嫌がらせを受けるし、ジュディの両親は警戒心むき出しでキツネ対策スプレーを渡す周到ぶり。
みんな警戒しまくり、ハナから信用などしていないのである。
何より、肉食動物の方が登場するキャラクターも数も少なく、圧倒的にマイノリティ。草食動物の方がマジョリティで強者なのである。
最後のベルウェザーの裏切りもレオドア市長の扱いに対する憎しみから来るものだと思われ、偏見や思い込み、差別の意識が負のスパイラルにつながることを暗示している。
黒人、白人の人種問題やLGBT、男女格差、宗教にまつわる内紛、戦争など、現代社会に起きているあらゆる問題の根源的な部分、本質を描いているからこそ、この映画はただのエンターテイメント映画ではなく、社会派映画を見た後のような気持ちになるのだ。
これは、もはや現代を切り取ったドキュメンタリーそのもの。
「あなたもジュディのように、物事の表面的な価値に囚われ、偏見を持ち、知らないうちに差別していないか?」
「差別される側、弱者の話や意見に耳を傾けているか?」
「相手を信じることを最初から諦めていないか?」
そんな風に観客に問いかけているようで、深く深く考えさせられる。
「こういった重い問題を大人、子供すべてに向けてメッセージングするとこれ以上の解はないのかもしれない」と思えるほど至極の映画になっている。
もはや子供向けのファンタジー映画などではない。大人も子供も何回でも見て、議論すべき、最高のエンターテイメント映画であり、現代の闇を描いた社会派映画なのだ。
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