ブランディングとSPの両面から探る「動きたくなる」体験のポイント【AdverTimes Days 2017 レポート】
公開日:2017/04/26 更新日:2019/10/04講演内容
昨年は100万人以上が来場し、ことしは出展者を5万人に増員する富士フイルムの「“PHOTO IS”想いをつなぐ。50,000人の写真展」。企業ブランディングの側面だけでなく、実は街の写真店に毎年多くの人が訪れるきっかけにもなっています。一方、トイザらス店頭では、親子3代が参加し、写真を撮影できるイベントが人気。ソーシャルメディアへの投稿も相次いでいます。クリスマスや年末年始の商戦期はもちろん、毎週末の企画にも工夫が。来店促進はもちろん、自社会員組織の強化にも貢献しています。「参加したい、周りを巻き込みたい」――リアルの場で多くの人がこんなふうに思う企画は、どんなふうに生まれ、運用されているのでしょうか。ブランディングとセールスプロモーションの両側面から探ります。どんな企業にとってもブランディングとセールスプロモーションは不可欠。この双方から、「人を動かす体験」をつくるためのヒントを探ります。
登壇者
日本トイザらス株式会社 マーケティング本部 マーケティング部 サイネージ/インストアプロモーション課 マネージャー 立原 俊久 氏
富士フイルム株式会社 宣伝部長 兼 富士フイルムホールディングス株式会社 経営企画部 ブランドマネジメントグループ長 松本 考司 氏
トイザらス 動きたくなる体験のポイント
トイザらス・ベビーザラスのミッション 世界一のおもちゃ・ベビー用品の総合専門店 実店舗とオンラインストアのシームレスなショッピングに注力し、子どもや家族の記憶に残るショッピング体験を提供していく
ロゴマークの由来 Rが逆になっている アメリカでは子供はRを書き間違うことが多い 子供に親しんでもらいたいとの想いから 日本語でも「ら」をあえてひらがなに
全国160店舗とオンラインストア オンラインだけでなく、全国にリアルの店舗があるのが強み
動きたくなる「5つのポイント」
1.リアルだからできるFun体験
2.トイザらスだけの特別なモノ・コト
3.その日しかないという特別感の演出
4.口コミ・写真投稿による拡散
5.顧客ロイヤリティの向上
2016年トイザらスにサンタがやってくる サンタと写真撮ってSNSに拡散 サンタが子供の前でお父さんからもらうことでサンタがいるという証明になっている
撮影してあそびたくなる店舗内装飾 店内にキリンとか大きな恐竜とかを置いて、撮影しやすい店舗に 人生ゲームの盤面をレジまで通路に貼ってる(遊び心) トイザらスのプライベートブランドで商品化している乗り物も用意
撮影してシェアしたくなる仕掛け キティちゃんの顔ハメパネル トイザらスしかない
富士フイルム 「“PHOTO IS” 想いをつなぐ。50,000人の写真展」
日本最大級の参加型写真展 ・誰でも参加OK ・全国35箇所に展示 ・作品の優劣はなし ・見た人の感想メッセージを写真と手書きで応募者に届ける
写真屋に行くきっかけつくり 専用台紙とプリントを買うなどあえてお店に行く導線づくりをしている その導線づくりや全国展示の結果、応募者100万人と参加者(観覧者)5万人と伸びた
企業理念 写真文化を守ることで人々の生活を豊かにする 象徴的だったのが「写真救済プロジェクト活動 東日本大震災」 「写真」の重要性を再認識した
他社協業企画 JA 鉄道博物館などいろんなところと協業(コラボ)して写真展示会を実施
市場分析 3Cから4Cへ
3C
・顧客 Customer
・競合 Competitor
・自社 Company
→時代や業界の切り方によって変わりやすく、捉えにくい
4C
貢献 Contribution 写真文化を守り生活の質の向上
共創 Collaboration 様々な企業と連携
指揮・接続 Conduct/Connect 写真を通じてほか社会とつながりながら生活の質の向上を目指す
→時代などに流されない、共通の軸として社内で共有を図っている
パネルディスカッション
ユーザーが利用する理由 ・トイザらス 商品そのものではなく、店舗での体験(コト) レゴと組んでその場で組み立てて持って帰ってもらえる企画を用意 100組限定だが人気
・富士フイルム 写真の枚数が多いので実際に見たときに迫力がある 投稿者が家族で見に行って記念写真を撮る場になっている
参加者とのコミュニケーション
・トイザらス
6か月誕生記念としてハーフバースデー企画を実施
店内で記念写真撮ったり、おもちゃで遊んだり、手がた・足がたをとったり
意図してなかったが、お母さん同士がつながる
・富士フイルム 写真と手書きの価値 専用台紙の値段は476円~と決して安くないが、一回出展すると4割がリピーター
ブランディングとSPの交わるポイントとは ・トイザらス 楽しい体験ができる=楽しい企業
・富士フイルム 見るポイントは企業理念が伝わる施策になっているか
所感
どちらの企業も企業理念がしっかりしていて、「それを伝えるためにどうしたらいいか」、「どうしたらお客様に楽しんでもらえるか」という視点で施策を考えて、実行していて、それが判断軸になっているのが興味深かった。特に3C→4Cへという考え方は、“市場” “競合” “ターゲット” など変動要素があるものから、「自分たちの理念、想い」という不動のものに切り替えたことで軸が定まり、現場と一体となって動いているのが素晴らしい。
どちらも「おもちゃ」「写真」というモノがあって、かつリアルでのチャネルという視点だったので、無形サービスを扱うIT企業とは条件が違うのかもしれないが、サービス企画や施策を考えるときに会社の理念、想い視点で自分はまだまだ考えられていない。
もうずっと、「ブランディング」という言葉がバズワードとして使われているが、どれだけ本当の意味でみんな使っているのだろうか。企業の存在意義(ミッション)があって、これから先をどうしていくか(ビジョン)、そして今何をするのか(コンセプト)。自分たちはこうありたい(ブランド・アイデンティティ)というのがあって、初めて顧客に「こういうイメージ」(ブランドイメージ)となって届く。“伝える”のではなく、”伝わる”。そういうものなのではないか、と最近は思っている。
本来はそれらがあって、サービスやプロダクトを作っていくべきなんだろう。ただ、日々状況が変わり、プロダクトがアップデートされていくIT企業が同じようにできるのか、どこまで未来を見据えてミッションと定義するのか、というのも疑問だ。LINE、LIFULL、Suumoも先にWebサービスを出して、多方面にサービス展開してく中で後からブランドを統一している。その統一するタイミングで会社としての企業理念やミッションも再定義しており、時代や事業環境の変化に合わせ、どこかで見直す必要があるのだろう。
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