【レポート1】PARTY 伊藤直樹さんのキャリアから紐解く「世界で通用するクリエイティブディレクションとは?」セミナー
公開日:2016/07/26 更新日:2020/02/017月に「六本木未来大学」というクリエイティブディレクションを学ぶための学校で、PARTYの伊藤直樹さんの講演があったので、聞いてきた。
伊藤さんは広告業界、クリエイター界隈では知らない人はいないであろうスーパークリエイターで、「ナイキ」「グーグル」「SONY」「無印良品」など企業のクリエイティブディレクションを手掛けて来られた方。
そのキャリアをいかにして築いてきたか、世界のクリエイティブディレクターはどんな人か、世界のものづくりのパワーバランス、これからの時代に必要なこと、PARTYが目指す方向性など多岐に渡る話が聞けて、めちゃくちゃ面白くて、アドレナリン分泌しまくったので、まとめてみます。
【レポート1】PARTY 伊藤直樹さんのキャリアから紐解く「世界で通用するクリエイティブディレクションとは?」セミナー
【レポート2】PARTY 伊藤直樹さんのキャリアから紐解く「世界で通用するクリエイティブディレクションとは?」セミナー
【レポート3】PARTY 伊藤直樹さんのキャリアから紐解く「世界で通用するクリエイティブディレクションとは?」セミナー
目次【記事の内容】
- 伊藤直樹さんプロフィール
- 「逃走」がキーワード
- クリエイティブ・ラボ「PARTY」のやっていること
- 1995年ネット元年
- 1998年Googleが登場。世はITバブル
- 1999年、ネットの常時接続とimodeが始まった
- 2006年Youtubeという、インターネットのテレビが登場
伊藤直樹さんプロフィール
クリエイティブディレクター
1971年静岡県生まれ。早稲田大学卒業。 テクノロジーとストーリーテリングの融合を追求するクリエイティブラボ「PARTY」のCEO。 これまでにナイキ、グーグル、SONY、無印良品など企業のクリエイティブディレクションを手がける。 2016年、Fast Company誌が選ぶ世界の「The Most Creative People in Business 1000」。 最近の作品に、成田空港第3ターミナルの空間デザインやサンスターのハミガキIoT「G・U・M PLAY」などがある。 文化庁メディア芸術祭優秀賞、グッドデザイン賞金賞、カンヌ・ライオンズ金賞など、国内外の200以上に及ぶデザイン賞・広告賞を受賞。作品集に「PARTY」(ggg
books)など。経済産業省「クールジャパン官民有識者会議」メンバー(2011、2012)。NYの国際デザイン・広告賞ONESHOWの国際ボードメンバー。京都造形芸術大学情報デザイン学科教授。
六本木未来大学のWebサイト
伊藤さんを初めて知ったのは、たしか2008年の『LOVE DISTANCE』ぐらいの頃。
ブラックなWeb制作会社で死ぬほど働いてたときにこれを知って、戦慄が走ったのを覚えてる。
男女がひたする走る動画が毎日放送され、最後の最後まで見ないと何の映像かわからない。最後は 「コンドーム」の宣伝 というオチが、それまで真面目なシーンだった分、ギャップがあって、何よりエスプリが効いていた。
今回は「世界で通用するクリエイティブディレクション」というテーマについて、約2時間がっつりと話を聞いてきました。
「逃走」がキーワード
遅れて行ったらいきなり「逃走論」という本の紹介。この本の「逃走」というのがこの日のキーワード。
《パラノ人間》から《スキゾ人間》へ、《住む文明》から《逃げる文明》への大転換の中で、軽やかに《知》と戯れるためのマニュアル。―現代思想の最前線を疾走する若き知性がドゥルーズ=ガタリ、マルクスなどをテクストに語る《知》的逃走のための挑発的メッセージ。
クリエイティブ・ラボ「PARTY」のやっていること。
「インターネットなどを使って、言語に依存しない、インタラクティブな体験のデザインを世界に向けて。」
今でこそ、このビジョンが見えたけど、最初はほとんど見えていなかった。
特に学生の頃は働くのが嫌だったのもあり、こんなことは考えていなかった。やりながら見つけていった。
1995年ネット元年
伊藤さんは映像とインターネットに関心があり、代理店に入れば、いろいろな表現方法にチャレンジできるのでは、と思い、新卒でADKへ入社。
そこには、TUGBOATというCM業界の巨人がいた。
TUGBOATはクリエイティブディレクター、CMディレクターの「岡康道さん」が作った広告代理店で岡さんは「湯川専務」(SEGA)、「カードの切り方が人生だ」(ライフカード)のCMを手がけてきた方。
巨人を見て、かなわないと思って逃げたくなった伊藤さんが思ったこと。
CMじゃ勝てない。インターネットなら、どうか。
1998年Googleが登場。世はITバブル
メトカーフの法則
ネットワークの価値は、それに接続する端末や利用者の数の2乗に比例する。
収穫逓増の法則
生産規模が2倍になると生産がさらに効率的になり、生産量が2倍以上になる。 結果、その市場で最初に最大のシェアを奪った企業だけが最大の利益を得て勝ち残る。
これらの法則は2016年の今見ると、正しいことが証明されている。
つまり、始めた者勝ち。2011年から始まったPARTYは負け。
逃走したくなった。
規模じゃ勝てない。インタラクティブなら、どうか。
1999年、ネットの常時接続とimodeが始まった
NIKEFOOTBALL インタラクティブゲーム「蹴メ」
「携帯電話を使ってNIKEFOOTBALLを表現せよ」というNIKEからのミッションに携帯メールをサッカーボールに見立てたゲームを提案。友達とパス(メール)を交換し合い、メールで送られてきたURLにアクセスして、ドリブルやシュートを選択、ゴールを目指す。
離れていてもサッカーできないかというのが着想の元。
メール交換は、パス交換。バイブは、トラップ。
その後、CR局へ移動。しかし、仕事が回ってこない。 200人いて、自分はそのうちの一人。周りはみんな優秀で自分は新人。
逃走したくなった。
その頃Flash8が登場して、一気に映像らしくなった。当時バスキュールがAdobeと仲良くてFLASHを触ることができた。
Saab スペシャルサイト「Saabは、細部だ。」
Saabの9-3 Sports Estateのプロモーションサイト。航空機製造をしているSaabは他の車と違うプロダクトコンセプトを持っていて、その細部を表現している。
Flash8を使って「ワンクリック」というアクション一つで、映像をズームさせていく感覚を実現したかった。「テレビCMではない、映像表現ができる。」そう気付いた。
2006年Youtubeという、インターネットのテレビが登場
NikeCosplay
NIKEiDのプロモーション。秋葉原にカラフルなヒーローが現れ、あちこち走り回る撮影を敢行。撮影自体を面白がってみんなが写メを撮ってクチコミで広がった。
おそらくYouTubeを使った初のバイラルムービー。
YouTubeでアキバから世界に――NIKE iDの広告戦略
国内じゃ勝てない。海外なら、どうか。
Xbox360専用ソフト「ブルードラゴン」発売記念プロジェクト 「INTERACTIVE WALL BIG SHADOW」
Xbox360専用ソフト「ブルードラゴン」発売記念プロジェクト 「INTERACTIVE WALL BIG SHADOW」
主人公の影がドラゴンとなって戦うゲーム「ブルードラゴン」。その発売を記念して開催された映像インスタレーションイベント。
渋谷の中心で来場者の動きに合わせて、ビルの壁面一杯に巨大な影を投影。参加者はゲームと同じように自分の影を操りながら、他の参加者と遊ぶことができる。
「影は世界共通」というのが軸。言葉が通じなくても、誰もが原体験として持っているもの。
影をセンター街でどアップで映したかった。場所がヤマダ電機の駐車場しかなかったため、営業保証したり、渋谷の街が明るすぎて影ができなくて、費用の高いプロジェクターを重ねて投影するなど、進行上の課題を一つずつクリアしていった。
「LOVE DISTANCE」
サガミオリジナル002のグローバルキャンペーン。
遠距離恋愛をしている2人が12/24に出会うまで10億ミリ(1,000km)の道のりを走る。走り続ける様子をネット上でリアルタイム上映。
2人の連絡手段はテレビ電話とブログのみでその様子もネットで放送。2人が最後ゴールして初めて、視聴者はサガミオリジナル002(コンドーム)の広告だとわかる。
伊藤さんは2008年当時、ワイデン&ケネディに在籍。
相模ゴム工業から「ウチをグローバルにしてほしい。賞を獲って欲しい。」とのオーダーで、予算は2,000万円ぐらい。
ワイデンはNIKEの広告を担当していたので、グローバル企業がCMに1本5億円以上かけてるのを知ってた。多いところは20億かけるところもある。
そんな中、どうやってグローバルCMに勝つか。考えた手法は4つ。
- ドキュメンタリー
- セリフなし
- アイロニー
- 賞を獲る
予算も限られていたので、「真実を写そう」と考えた。
役者を使うのではなく素人のドキュメンタリー仕立てにして、世界でもわかるように非言語にした。
また、海外に住んでいて、ストレートなものをストレートに表現すると海外では反応が悪いのを知っていたので、ハッピーエンドを茶化した。
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